会長挨拶
大会長 斉藤まなぶ
弘前大学大学院保健学研究科
この度、第8回日本DCD学会学術集会を、北海道・東北地区大会として2025年5月10日(土)・11日(日)に青森県青森市で開催させていただくことになりました。
大会のテーマは、「地域で支える連携と協働~運動の不器用さの早期発見から支援へ~」です。運動の発達は、感覚・認知・言語等の発達と関連しながら、乳児期から幼児期にかけて急速に発達していきます。発達性協調運動症(DCD:Developmental Coordination Disorder)は、神経発達症のひとつで、運動に影響を与える神経疾患がないにも関わらず、協調運動の獲得や使用に困難さをきたす障害です。自閉スペクトラム症や注意欠如多動症などの併存症が多く、その病態解明や、早期発見の手法、効果的な介入については国際的に未成熟な分野で、学術的な研究や事例報告の積み重ねが期待されています。DCDは教育や労働の場面だけでなく、身支度や健康活動など日常生活の広範囲において支援を要するため、支援者の専門性も保育・教育・保健・医療・福祉など多岐に及びます。様々な場面で支援に当たる専門職が、本学会を通じて、DCDへの理解を深め、今後の連携と協働をより拡大していく機会になれば幸いです。
協調運動の問題は、DCDに限らず、器質的な問題を伴わない全般性の発達の遅れ(全般性発達遅延)や知的発達症のお子さんにも見られます。本学会では、障害名にとらわれず、発達的な協調運動の問題を抱える障害児者に対し、早期発見や有用な支援について、議論していきたいと考えています。特別講演では、こども家族早期発達支援学会副会長の松原豊先生にお話をいただきます。松原先生は、前職の筑波大学体育系教授として、長年にわたり障害のある子どもたちへの実践的な体育教育と運動支援にご尽力されており、たくさんのエッセンスをいただけると思います。他にはシンポジウムを3つ用意しており、DCDに関する様々な分野からの最新の知見に触れる機会を設けております。さらに、一般演題では、若手優秀演題賞を設けています。学会では様々な分野の若手研究者を応援しています。事例報告でも演題登録いただき、活発に討論されることを望みます。開催形式は、現地対面及びオンデマンド配信となります。桜の季節は終わっていますが、青森の美しい自然とおいしい海の幸を楽しんでいただきたく、現地でお待ち申し上げます。懇親会もご用意いたしますので、皆さま、交流を深めていただければと思います。
特別支援教育等、子どもの神経発達症への理解は確実に進んでいます。これから、乳幼児健診も見直され、早期発見、早期介入に向けて地域がその土壌をより深めていってくれることでしょう。私たち、一人一人の確実な努力と働きが、神経発達症をふくむ全ての子どもたちの未来につながっています。その貴重なひと時を皆様と共にできることを楽しみにしております。
令和6年12月吉日